『恋のラジオ体操 ~きみと、ぼくと、ひみつの河川敷~』

『恋のラジオ体操 ~きみと、ぼくと、ひみつの河川敷~』 (マツバラ)

夏っぽい絵本を描きました。

ちょっぴり淡いハートフルラブストーリーです。

タイトル 『恋のラジオ体操 ~きみと、ぼくと、ひみつの河川敷~』

 


ケイタくんとチヨちゃんは小学1年生。

 

ケイタくんは明るく元気で、ちょっとやんちゃな男の子。
チヨちゃんはもの静かで、大人しい女の子です。

 

正反対な二人ですが、家がおとなり同士ということもあり、幼稚園のころからいつもいっしょにいました。

 

遊ぶのも一緒、学校に行くときも一緒、お勉強するときも一緒。

 

チヨちゃんは体が弱かったので、いつもケイタくんがまるでお兄ちゃんのように
チヨちゃんのお世話をしてあげていました。

 

 


そんな二人に夏休みがやってきました。ところが、あるもんだいが起きました。

 

 

ラジオ体操は夏休みの宿題でした。
毎朝小学校の校庭に集まって、みんなで体操をします。

 

でも、チヨちゃんは体が弱いので、みんなとラジオ体操に参加できません。

 

ケイタくんはおもいました。

 

 

「チヨちゃん一人だけ体操できないなんて、かわいそうだなあ。
そうだ!チヨちゃんも体操ができるように、ぼくがお手伝いしてあげよう!」

 

さっそくケイタくんはチヨちゃんに計画をつたえました。

 

チヨちゃんは嬉しそうに笑いながら言います。

 

 

 

 

「わたしは、ケイタくんが一緒にいてくれるなら、なんでもうれしいよ」

 

 

夏休みに入ると、ふたりは毎朝近所の河川敷へいって、体操をしました。

 

 

 

 

チヨちゃんが疲れてしまわないように、テープに録音した音楽を時々とめながら、

ゆっくりゆっくり、ふたりのペースで体操をしました。

 

 

体操カードにハンコを押してくれる人がいなかったので、

おたがいにおうちのハンコをもってきて押し合いました。

 

チヨちゃんの名字は田中なので、ケイタくんのカードには「田中」が、

ケイタくんの名字は佐藤なので、チヨちゃんのカードには「佐藤」が、

日がたつにつれて二人のカードはお互いのはんこで埋まるようになりました。

 

 

 

 

8月も終わりごろのある朝のことでした。

ふたりがいつものようにラジオ体操をしていると、同じクラスの男の子たちがやってきました。

 

「ケイタくん、体操こないとおもったら、こんなところにいたんだね」
「ケイタくんは、チヨちゃんとずっと一緒だから」
「チヨちゃんのことが、好きだもんね」

 

 

男の子たちは、二人をみて、からかうように笑います。
それをきいたケイタくんは恥ずかしくなって思わず大きな声を出していいました。

 

「うるさいなあ!ぼくはチヨちゃんのお世話をしてあげてるだけで、好きとかじゃないもん!」


ケイタくんははっとしました。

 

 

 

 

となりでチヨちゃんが少し悲しそうな顔で笑っています。


何も言えなくなったケイタくんは一人で逃げるように帰っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。
大雨でした。
これならラジオ体操も中止だな、とケイタくんは思いました。
なんとなく、チヨちゃんに会いたくない気分だったので、

ケイタ君はその日河川敷には行きませんでした。

 

 

 

 

 

その日のお昼前のことです。
チヨちゃんのお母さんがケイタくんのおうちをたずねてきました。

「うちのチヨを知りませんか。朝、体操に行くと言ってでかけたまま、帰ってこないのです」


ケイタくんは外へ走っていきました。
河川敷で体操をしていることは二人だけの秘密。チヨちゃんの居場所は、
ケイタ君にしかわからなかったのです。

 

 

 

 

 

 

 

河川敷にいくと、チヨちゃんは橋の下で丸まって座り込んでいました。
チヨちゃんは朝からずうっと橋の下でケイタくんを待っていたのです。


ケイタくんは、なつやすみ前のチヨちゃんの行ったことを思い出しました。

 

「わたしは、ケイタくんが一緒にいてくれるなら、なんでもうれしいよ」

 

ケイタくんは走ってチヨちゃんのもとへいき、こういいました。

「チヨちゃん、ごめんね!…ぼく、きのう嘘ついたの。
本当は、チヨちゃんのこと大好きだよ!ラジオ体操、ふたりでしよう!」

 


チヨちゃんは驚いた顔をした後、少し困ったような、照れたような笑顔でいいました。

 

 

 

「遅いよ、もう……」



それから二人はさいごの31日まで河川敷でまいにちラジオ体操をしました。
雨が降っても、もうケイタくんが休むことはありませんでした。

 

31日、二人のカードはお互いのはんこでいっぱいになりました。

ふたりは笑いあいながら言いました。

 

 

「これからもずっと、いっしょだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


9月1日、ケイタくんのもとへあの男の子たちがやってきて、「ごめんね」といいました。
なんどもなんども「ごめんね」をくりかえしました。


ケイタくんは「いいよ!」と明るい笑顔でいいました。

 

 

 

 

「ケイタくん、かわいそうだね」
「そうだね。だってチヨちゃん、風邪を引いて、肺炎になってしんじゃったんだって」
「雨の日に、ずっとお外に出てて、橋の下で倒れてたらしいよ」
「ケイタくん、あれからずっと一人で橋の下で体操してたんだって」

 

 

「かわいそうだね……」

 

 

 

ケイタくんは明るい笑顔で先生に言います。

 

 

「先生、ラジオ体操きちんといかなくてごめんなさい。

でもね、ぼく、ずっとチヨちゃんと体操してたんだ!

ずっとチヨちゃんと一緒にいるって、約束したんだよ!」

 

 

 

差し出された体操カードには、
たくさんのチヨちゃんの「田中」ハンコが押されていて、

 

 

 

ある日を境にハンコはなくなり、

まるで1日1日判を押すように、ポタリと血が広がっていたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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